父が死んだ。昨日死んだ。
父は食道癌だと、2018年の12月に聞かされた(気がする)。
抗がん剤治療をして、岐阜の病院に通院していた。
せっかちなのか、歩くのが早かったのに、凄く遅くなった。
だるそうだった。
2019年の年末に皆で鍋をした。
その次の日かに風呂に入ってて、あったまってたら倒れてしまった。
救急車で運ばれた。
肺炎だったみたいで、厳しかったけど乗り越えたそう。
阿佐ヶ谷の河北病院に入院して、治療。
ほぼ寝たきりになり、起き上がるのもやっとになっていく。
リハビリを...って母は考えてたけどそんなレベルの話ではなかった。
動けないし歩けない。
具合も悪くなったらしく、父は自ら「なんかおかしい」と医師に相談したら、胸水と腹水が溜まっていて、さらにリンパ癌も大きくなっていた。
それが三月頭で、河北から転院を考える。
患者自ら訴えて初めて診察するなんて、って母は言ってた。
ところが、どこも受け入れてくれない。
転院先が無い。
それをきいたとき、まずいかもなって思った。
14日、河北にお見舞いに行く。
なにを話してるか、わからない。
でもよく話してる。震えてる、って思ったら心臓の鼓動で全身が揺れていた。
目も9割閉じていた。
母が病院と相談して、荻窪のホスピスに移った。
治療はもうしない、緩和ケアのみをしてもらう。
わたしはずっとずっと言わなきゃいけないことがあって、ずっとずっと考えてた。
早く言わなきゃ。
そう思ってて、ずるずる延びてった。
1人じゃないと、言えないって思ったから一人でホスピスに行きたいって母に言った。
ホスピスに移ったのは、多分17日か18日で、みんこは19日にお世話になった人と、母の三人でお見舞いに行った。
わたしは仕事だったので、20日の金曜日に行くことにした。
土曜日でも良いかなって思ったけど、なんとなく金曜日に入れた。
早起きして筋トレして、それから中井駅から西武線に乗った。
上井草から歩いて15分くらい。
綺麗な病院。
綺麗なフロアから207号室へドキドキしながら向かう。
ドアは空いてたのでスーッと入る。
お父さんは、タンが絡んでるみたいで、呼吸をしながらゴホゴホ、ごろごろ言ってる。
体力がないと咳もできないみたいで、常にタンが絡んでる。
苦しそうだなー。
「こんにちは」っていって、ベッドの横に突っ立った。
なんか喋ってる。
よく喋る。
わからない...わからないよお!
なんとなーく、「なになにをよろしく」っていうのと、「これはこうすること、覚えた?言ってみろ。」みたいなことを話してるような。
ベッドを少し起こしてっていうのはわかったので、少し起こした。
酸素マスクをしてて、管の先を見たら戸棚の中に酸素供給の機械があった。
その下に、多分タンを吸いとる吸引器があって、少し血が混じってる液体が入ってた。
吸引は痛いらしく、嫌がるみたい。
一時間半くらい、横にいた。
わたしからは特に話しかけない。
父は頑張って話してくる。
ほとんどわかんないけど、うんうんってうなずく。
ああ、わかったら!なにを言いたいかわかったら!
椅子に座りながら、様子を見たり、遠くを見たり、鼻をかんだり。
4時に母が来るって言ってたから、のんびりしてたら3時過ぎに来た。
早いな!
1番言いたいことまだ言えてない。
母は察しがいいみたいで、席を外してくれた。
父がなんか喋ってたけど、ぶった切って言ってきた。
大きく、はっきり言った。
なにを言ったかは言わない。誰にも言わない。
でも、父は、「うんうん、いいよ、わかったよ。」みたいな反応だった、あんまし覚えてない。
言うのに必死だった。
でも、伝えられて、わたしはそれで救われたから良かったなって思った。
ただ、それが言いたくてずっと言いたくて、意識があるうちに言えて、良かった。
わたしは都合がいいから、これでいいってことにしよう。
いま、家にいたけど外に出て、歩きながらお酒を飲んでる。
お通夜は形式上ないから、これがわたしのお通夜。
大嫌いだったし、ずっと大嫌いだけど、死んでしまうと不思議な、別物の感情が生まれるな。
家で泣きたくない。
しめった空気が嫌なんだよ。
でも、涙が止まらない。
わたしがお見舞いに行ったその日の21時過ぎに亡くなってしまって、病院から電話があったから急いで行ったのに電話から10分で逝ってしまった。
やっぱり、せっかちだなぁ。
亡くなったあと、酸素供給の戸棚を開けたら、タンの吸引器の液体が増えてた。
どうか、苦しんでないことを祈る。
お疲れ様、と声をかけた。
あと、よろしくとこれはこうしろ、のところなんて言ったのか教えてほしい。
そう声をかけた。
いま、かなり参ってる。
早く涙が枯れて欲しい。
享年64歳でした。
早いけど、わたしは苦しむ時間が短い方が良いと思うので、これくらいかなって思います。
お父さん。後悔先に立たずだよ。
なぜ検診に引っ掛かったときすぐに病院に行かなかったのか。
なぜタバコとお酒を減らさなかったのか。
自業自得だよ。
反省しなさい。
お母さんに感謝しなさい!
その言葉は、わたしにも同じことが言えるってこと、知っている。